劇団銅鑼 齋藤千裕さんにインタビュー
劇団銅鑼創立50周年記念公演第2弾No.57 「ふしぎな木の実の料理法~こそあどの森の物語~」劇団銅鑼 齋藤千裕さんにインタビュー
劇団銅鑼創立50周年記念公演第2弾No.57 「ふしぎな木の実の料理法~こそあどの森の物語~」50周年という大きな節目を迎えた劇団銅鑼。その記念公演の第2弾「ふしぎな木の実の料理法〜こそあどの森の物語〜」が2024都民芸術フェスティバルで上演されます。主演は若手の注目株、齋藤千裕さん。舞台が始まる前に場内が暗転する瞬間の緊張感や、生の舞台の迫力がたまらないと語ります。今回の作品の魅力と、舞台そのものの面白さなどを、楽しそうに軽やかに話してくれました。
齋藤千裕(さいとう ちひろ)
1994年、福島県会津若松出身。郡山国際アート&デザイン専門学校声優科卒業。2015年劇団銅鑼に入団。主な出演作に『おとうふコーヒー』、『蝙蝠傘と南瓜』、『チムドンドン〜夜の学校の話〜』、『泣くな研修医』、『「真っ赤なお鼻」の放課後』 などがある。
──上演される舞台についてご紹介ください。
岡田淳さん原作の児童書『ふしぎな木の実の料理法』を舞台として上演させていただきます。私が演じる少年スキッパーは無口で恥ずかしがり屋、人との交流が苦手なタイプの男の子。とある手紙と木の実をきっかけに「木の実の料理法」を知っている誰かを探しに森の住人たちを訪れていくというところから物語が始まります。スキッパーの成長や彼が大事にしているものを、絵本のページをめくるようなワクワクと舞台のワクワクを合わせて表現できればと思います。
──スキッパーはどんな少年ですか?
無口で恥ずかしがりや。内気な少年なので最初はみんなとワイワイ楽しんだりはできないんです。でも、いろいろな人と交流を重ねていく中で変わっていく。そこが見どころの一つです。スキッパーの中には、誰かと何かを話したいという気持ちはあるかもしれない。でも、それにはまだ気づけていない。そんな部分をネガティブなものではなくポジティブな部分として、どういう風にお客さんに伝えればいいか。今、そんなことを考えています。
──演劇を始めたきっかけは?
私は元々、声優を目指し、専門学校に通っていました。いざ卒業が近づきどうする? というときに、演劇の先生に「マイクの前で芝居をしたいなら、まず舞台で体を使った表現をできるようになりなさい」と言っていただきました。その先生に紹介いただいて劇団銅鑼を受けることになったんです。経験なんてまったくなく、右も左も分からない状態からのスタートだったので、本当にいろいろな人にご迷惑をおかけしました(笑)。今では「生」の舞台を届けたい、今自分ができる精一杯をお客さんに届けたいという気持ちで、すっかり舞台沼にハマっています。
──声優と俳優はどのような違いがありますか?
俳優はやはり体を動かして演技をする。相手の顔を見ながら演技し、初めて生まれてくるものがあります。声優さんはそれをマイクの前だけでやれるから、やはりそれはすごいことだとも、改めて感じていますね。
舞台は、今日のお客さんはどんな様子なのか?と感じられるのが面白い。日によってお客様の雰囲気も違います。「舞台って生なんだなぁ」と実感しますし、今日これから舞台に上がるんだという高揚感も生まれる。そして、お芝居が始まるときは舞台が暗転して暗くなりますよね。その瞬間からやはりスイッチが入る。先輩方の表情を見ると……もう、ぞわぞわしますね。
──劇団銅鑼はどのような劇団なのでしょう?
劇団銅鑼は50周年を迎えました。音声ガイドや舞台手話通訳などバリアフリーにも力を入れていて「誰もが平等に楽しめる舞台」を目指しています。先輩後輩がお互いリスペクトを持って意見をしっかりと交換し合える、風通しのいい劇団でもあります。旅公演に行くこともあり、学校公演の機会も多いです。
──今回の公演は、公演延期になった舞台と聞きました。
そうなんです、コロナ禍もあり、昨年公演だったこのお芝居の上演が延期になってしまいました。『ふしぎな木の実の料理法』を心待ちにしてくださっているお客様もいらっしゃると思いますし、劇団としても50周年記念の作品なので、しっかり盛り上げていきたいと思っています。自分としては初めて主軸となる役をいただけた。経験がないのでドキドキはありますが、私自身、このお話がすごく好きなので、 楽しみに待ってくださっているお客様のためにもしっかり届けたいです。
本の中で登場してくる人物たちのユニークさも大きな見どころ。1人1人が個性豊かなんです。 本当に1つの脳みそから生まれてきた物語なの(笑)、と思ってしまうほど。今回は原作を読んでいらっしゃる方はもちろん、初めてこの世界に触れるという方も楽しめる舞台だと思っています。
──ずばり舞台演劇の魅力は?
演じる側としてはやはり、まず「生」であるというところ。それが一番大切だと思っています。稽古も本番もその時々で、出てくるものが違う。全く同じものは存在しない、そんな生の良さを感じています。この面白さは、おそらく観る側の人にも感じていただけると思います。役者が涙を流す瞬間、感情を込めるセリフやその表情を見て、何かを感じていただけるはず。そうすると、自分の中に残るものがある。その迫力……。やはり、画面越しに眺めるのと、生で観るのには大きな違いがありますね。
──初めて舞台を観る人のコツはありますか?
舞台をあまりご覧になったことのない方も、 特に何も考えずに劇場に足を運んでいただきたいです。予習が必要とか、用語を知らないとわからないということもありません。隣に座っているお客さんの反応を見てムリに笑ったりする必要もなくて、自分の世界を大事にしていただきたい。笑いたかったら笑ってもらって、もしも涙がポロッと落ちるようなら、それはもう役者冥利につきます。まずは頭の中を空っぽにして来てもらえるのが一番いいですね。空っぽだった頭の中にいろいろな感情、想いを詰め込んでいく、それが役者の仕事かなとも思っています。何も気負わずに、来ていただきたいですね。
──最後にお客様へ、メッセージをお願いします。
「ふしぎな木の実の料理法〜こそあどの森の物語〜」の舞台をやらせていただきます。 この舞台は少年スキッパーが踏み出した大きな一歩を描いた作品。その先にどんな景色が待っているのか? 自分が本当に大切にしたいものは何か? これを感じていただける舞台です。ぜひご来場ください。お待ちしております。